令和5年度は、相続制度に関する重要な改正が施行されます。
全2回にわたって相続法改正を解説します。
遺産分割協議をいつまでに成立させなければならないという制限はありません。
従前は、特別受益や寄与分の主張についても、いつまでに主張しなければならないという期限は定められていませんでした。
しかし、これでは、「遺産分割を早く行おう」というインセンティブが働かず、相続となる土地の名義変更が長期間行われないなどの事態が生じ、所有者不明の土地が増加するなどの弊害が生じてしまいました。
そこで、今般の改正では、早期の遺産分割請求を促すため、相続開始から10年が経過した後は、原則として特別受益や寄与分の主張ができなくなることになりました(改正後民法904条の3)。
これにより、相続開始から10年経過した後は、当事者は特別受益や寄与分の主張をすることはできず、法定相続分に従って財産を相続することになります。
つまり、特別受益や寄与分を加味した公平な遺産分割協議の成立を目指すのであれば、遺産分割協議は10年以内に行っておく必要があるということになります。
これまでは、相続により共有となった財産の分割方法について、遺産分割(民法906条以下)によるのか、共有物分割(民法256条以下)によるのかが明文化されていませんでしたが、改正後の民法258条の2は、これまでの判例法理に従い、原則として、遺産分割の手続によらなければならないと定められました。
これは、家庭裁判所で行う遺産分割の手続により、遺産全体を対象にして、事案の性質に応じた柔軟な解決を志向することを可能にするためです。
もっとも、例外的に、共有者が亡くなったなどにより共有物の持分が遺産に属することになり、遺産共有と物権共有が混在する場合、相続開始時から10年を経過したときは、相続財産に属する共有物の持分についても民法256条の規定による共有物分割をすることができることとされました(改正後民法258条の2第2項)。
この場合、原則に従えば、遺産共有になった相続人は、相続人同士の遺産分割を行い、その後に改めて物権共有にある者との共有物分割による共有の解消を行うという二段階の手続を踏むべきということになりますが、さすがにこれは迂遠です。各相続人に遺産分割の機会が保障されるのであれば、一つの手続ですべての共有関係を解消できる方が、手続負担の軽減のためにも、所有者の早期確定の観点からも有意義だからです。
以上