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令和5年度に施行予定の法改正②

2023年3月27日 / 法律コラム

令和5年度中に施行予定の法律の整理を続けます。
今回は、相隣関係に関する民法改正を取り上げます。

 

第1 隣地使用権の明確化(令和5年4月1日~)

改正前の民法209条1項では、一定の場合に「隣地の使用を請求することができる」と規定されていましたが、「請求することができる」の意味内容が必ずしも明らかではありませんでした。

そこで、改正後の民法209条では、
(1) 隣地を使用できる権利であることを明確化する
(2) 隣地を使用できる場合・目的を明確化する
(3) 隣地所有者への配慮を明文化する
という改正が行われました。

具体的には、改正後の民法209条1項は、「隣地を使用することができる」となり、一定の場合、隣地を使用することができる場合があることを明確にしました。

隣地を使用することができる場合は、
① 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
② 境界標の調査又は境界に関する測量
③ 第233条第3項の規定による枝の切取り
です。

そして、隣地を使用する場合、原則として、その目的等を隣地使用者に通知しなければならず(改正後民法209条3項)、使用する際は、隣地使用者のために損害が最も少ないものを選ばなければならないこととされています(改正後民法209条2項)。また、隣地使用によって損害を与えた際は、償金を支払う必要があります(改正後民法209条4項)。

 

第2 ライフライン設備の設置権・使用権(令和5年4月1日~)

改正前の民法では、電気・ガス・水道などのライフラインを設置したり、使用したりすることについての規定が整備されていませんでした。

改正後民法213条の2第1項は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければライフラインの確保ができない場合には、承諾がなくとも、設備を設置し又は他人が所有する設備を使用することができることが明記されました。

使用する場合に事前通知が必要で(改正後民法213条の2第3項)、使用する際は損害が最も少ないものを選ばなければならず(改正後民法213条の2第2項)、損害を生じさせた場合、償金を支払う必要があること(改正後民法213条の2第5項)は、隣地使用権(本稿「第1」参照)と同様です。

 

第3 枝の切除権(令和5年4月1日~)

改正前の民法では、隣地の竹木が越境した場合、越境したのが根であれば切り取ることができましたが、枝だったときは、これを自ら切り取ることはできず、竹木の所有者に切り取るよう請求することができるにすぎませんでした。

改正後民法233条では、枝の越境は、原則として、竹木の所有者に切り取りを請求するという枠組みは維持しつつ、自ら切り取ることができる例外的場合があることを明示しました。
自ら切り取ることができる例外的場合は、
①催告しても竹木の所有者が相当期間内に切除しないとき
②竹木の所有者又は所有者の所在を知ることができないとき
③急迫の事情があるとき
です。

切除費用についての規定はありませんが、土地所有者が越境部分を自ら切り取った際の費用は、竹木所有者に対して請求できると考えられます。なぜなら、切除義務を負うのはあくまで竹木所有者なので(改正後民法233条1項)、土地所有者は本来支出する必要のない費用を負担したことになるからです。

また、立法担当者の解説によると、切り取った枝の所有権は土地所有者が取得しますので、土地所有者はその枝を自由に処分することができるとされています。

以 上