お知らせNEWS

HOME お知らせ パワーハラスメント防止措置

パワーハラスメント防止措置

2021年12月24日 / 法律コラム

1 令和4年4月1日から義務化

職場におけるパワーハラスメント防止対策を講じることが,中小企業についても,令和4年4月1日から義務化されます。

2 事業主が講ずべき措置

事業主が講ずべき措置は,以下のとおりです。これらの措置を必ず講じなければなりません。

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

①パワーハラスメントの内容,パワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し,管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

②パワーハラスメントの行為者については,厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し,管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること

例えば,就業規則に,パワーハラスメントに対する使用者としての方針やハラスメントを行った者に対する懲戒処分規定を設け,それと合わせて,社内報などでハラスメントの防止を周知したり,ハラスメントの内容や背景などに関する研修を実施することが考えられます。

(2)相談(苦情を含む)に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備

③相談窓口をあらかじめ定め,労働者に周知すること

④相談窓口担当者が,内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。パワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく,発生するおそれがある場合や,パワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても,広く相談に対応すること

例えば,相談を担当する者をあらかじめ定め,電話,メールなど複数の方法で相談が受けられる体制を整備しておくことや,相談担当者に対して研修を行い,相談を適切に受けられるよう準備しておくことなどが考えられます。

(3)職場におけるパワーハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること

⑥事実関係の確認ができた場合には,速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

⑦事実関係の確認ができた場合には,行為者に対する措置を適正に行うこと

⑧再発防止に向けた措置を講ずること

相談(事件の端緒)に始まり,その後の調査を経て,処分その他の対応について,一度,全体の流れをシミュレーションするのが有用と思います。また,社内の調査には限界があり,ハラスメントが生じた事実を明確に認定,確認できなかった場合でも,それでもなお,これまでの対応,防止策,働きやすい職場環境作りに問題がなかったかどうかを再点検することが求められています。

(4)併せて講ずべき措置

⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ,周知すること

⑩事業主に相談したこと,事実関係の確認に協力したこと,都道府県労働局の援助制度の利用等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め,労働者に周知・啓発すること

例えば,プライバシー保護や不利益取扱いの禁止を徹底するよう研修を行ったり,相談担当者のマニュアルに盛り込むことなどが考えられます。

3 法的責任

パワーハラスメントは,被害者のメンタル面を蝕み,場合によっては自殺という痛ましい事態を惹起するおそれがあり,事後的対応は困難を極めます。そして,行為者の不法行為責任(民法709条)のみならず,使用者も,使用者責任(民法715条)や安全配慮義務違反の債務不履行責任(民法415条)が問われ,使用者自身が損害賠償義務を負います。
重大な経営リスクというほかなく,その予防,適切な対応が必須と言えます。

以 上