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新型コロナウイルス感染症と安全配慮義務

2021年9月27日 / 法律コラム

1 新型コロナウイルス感染症と会社の安全配慮義務

令和3年9月16日,新型コロナウイルス感染症により夫とその母親を亡くした遺族が,夫の勤務先に対して,夫とその母親が新型コロナウイルス感染症で亡くなったのは,会社が感染防止策を怠ったためだと主張して,約8700万円の損害賠償を求める訴訟を提起したという報道に接しました。

従業員が新型コロナウイルス感染症に感染したことを理由に,会社の安全配慮義務違反が問われる可能性があることは前々から指摘されており,裁判所の判断がどうなるかはさておき,それが顕在化したケースとなります。

 

2 安全配慮義務とは

会社には,労働契約に伴い,労働者がその生命,身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をする安全配慮義務があります(労働契約法5条)。

この安全配慮義務とは,労働者の職場における安全と健康を確保するために十分な配慮を行うべき義務であり,安全と健康という結果そのものを請け負う義務ではありません。安全と健康を確保するための措置を講ずべきという債務に留まります。

会社に求められる「必要な配慮」は,一律に決まるものではなく,従業員の職種,業務内容,労務提供場所等の具体的な状況に応じてその内容が決まると考えられています(最判昭和59年4月10日民集38巻6号557頁)。

 

3 安全配慮義務違反の基づく損害賠償責任

会社に安全配慮義務違反が認められる場合,それが原因で従業員の生命,身体に損害を与えたときは,会社はその損害を賠償する責任を負います(民法415条)。

生命,身体に関する問題となるため,損害賠償請求額が高額になる可能性が高く,また,使用者としての従業員に対する対応そのものが問われることになるため,シビアな紛争になることが想定されます。

 

4 新型コロナウイルス感染症に対してとるべき対応

新型コロナウイルス感染症は,急激な拡大を繰り返しており,緊急事態宣言とその解除を繰り返されるなど,各時点における社会の課題も変化し,依然として,対応が極めて難しい状況にあります。

前述のとおり,安全配慮義務の内容は具体的場合によって異なるものではありますが,未知なる新型コロナウイルス感染症への対策としては,政府の対応,指導を参照するのが合理的だと思います。

(1)内閣官房の「新型コロナウイルス感染症対策」のページ

まず,内閣官房の「新型コロナウイルス感染症対策」のウェブページには,緊急事態宣言やまん延防止等重点措置区域の意義や対象地域での生活上の注意点などと共に,とるべき対策がまとめられています。

https://corona.go.jp/

職場における取組みの5つのポイントとして,チェックボックス式のチェック欄に以下の点を確認していくことが推奨されています。

  1. テレワーク・時差出勤等を推進しています
  2. 体調がすぐれない人が気兼ねなく休めるルールを定め,実行できる雰囲気を作っています
  3. 職員間の距離確保,定期的な換気,仕切り,マスク徹底など,密にならない工夫を行っています
  4. 休憩所,更衣室などの”場の切り替わり“や,飲食の場など「感染リスクが高まる『5つの場』での対策・呼びかけを行っています
  5. 手洗いや手指消毒,咳エチケット,複数人が触る箇所の消毒など,感染防止のための基本的な対策を行っています

 

(2)業種別ガイドライン

また,業種ごとの感染拡大予防のガイドラインがまとめられており,業種に即した対応を検討するのに参照すべきものとなっています。

https://corona.go.jp/prevention/pdf/guideline.pdf?20210916

 

(3)厚生労働省のリーフレット一覧ページ

厚生労働省の「働く方・経営者への支援などのリーフレット一覧(新型コロナウイルス感染症)」のウェブページでも,業種・業態別マニュアルが掲載されています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00145.html

本日時点で,「オフィス」,「製造業」,「建設業」,「接客業務」,「運輸業(旅客運送)」,「運送・配送サービス業」のものがあります。

「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」という対策をしているかの確認をチェック方式で行うシートも掲載されています。

 

5 小括

会社に要求される安全配慮義務は,従業員の安全と健康を確保するための措置を講ずべきという手段債務であり,採るべき措置は個別の具体的状況によって内容は変わり得るもので,新型コロナウイルス感染症という未知なるウイルス感染症への対応という難しさがあるものの,政府の指導やそれに基づくガイドラインなどがかなり充実しており,それらを参照にしながら,具体的な根拠,科学的知見に基づく一定の対応を行うことが重要であると思います。

以 上